カツ丼小僧とスリラー隊が、ホテル責任者の家の前に到着すると、
カツ丼小僧は長年の心のうさを晴らすかのように、玄関の前で大声で叫んだ。
「よ~~~~~~い、……俺の事を警察に通報した、ホテルの責任者いるか~~~~~~っ?」
すると、家の中から、大慌てで、中肉中背の50代ぐらいのちょび髭をはやした男が飛び出て来た。
「な、な、な、な、なんだ? お、お前、い、今、なんと言った?」
「いよぅ、おじさん、久しぶりじゃねえかよ、俺だよ、俺、……憶えてる?
あんたにさ~~~、10年ほど前、警察に通報されちゃってさぁ~~~、
もう、あれから、俺の人生、メチャクチャだよ。 めっきり、落ちぶれちゃったよ。」
「俺が? いつ? 警察に通報したって? だ、第一、俺、お前の事なんか、な、何も知らないぜ。」
男は、首を引っ込めて、目を魚のように丸くして、ブルブルと怯えたように首を横に振った。
「そうやって、嘘をつくとこ、昔とちっとも変らないね。」
「お、おい、………、い、いいから、ちょ、ちょっと、中へ入れ。」
「それでは、皆さん、ちょっと、この場で待っていてください。
今から、ホテル側に対する長年の恨みを晴らしに行って来ますので………。」
カツ丼小僧は、行進隊に、そう告げると、ホテル責任者の家の玄関の中へと入っていった。
中に入ると、責任者が血相変えて、カツ丼小僧に近寄ってきた。
「お、おい、俺がなんだって? いつ警察に通報したって?
しょ、証拠はあるのかよ、証拠は? え?」
「頼みますよ、おじさん。 もう素直にゲロしてくださいよ。
時間の問題ですよ、 正直に白状してくださいよ。」
責任者は、カツ丼小僧の顔の前に、一本の指を突きたてて、言った。
「いいから、………証拠はあるのかと、聞いているんだ、………証拠………しょ、う、こ、………。」
「証拠? ええ、ありますよ………。とっておきのやつがね………。」
責任者は、一瞬、ヒヤリとした表情を見せたが、すぐに冷静さを装い、
「ふ~~~ん、 じゃぁ、見せてみな?」と一世一代の大見得を切ってみせた。