カツ丼小僧氏の優雅な生活。 16

大勢の聴衆と二人の全裸の警官を引き連れて、大邸宅の外に出ると、カツ丼小僧は大声で叫んだ。

 

「皆さん、安心してくださいな。このあたり一帯は、俺の敷地だ。

 何をしようが、一向に構いません。 これから、二人の全裸警官による、

 今世紀始まって以来の、一大ビッグイベント、「スリラー行進、ポリスくん」が始まります。

 

 この行進は、俺のビデオによって撮影されるけど、もし、この行進に参加したいと言う方は、

 自由に参加して構わない。 ただ、この行進は、あくまで俺の長年の恨みが溜まった、

 警察への懲らしめを兼ねているから、皆さんはキチンと服を着てくださるよう、

 お願い申しあげまぁぁぁす。」

 

制帽をかぶった二人の全裸警官が 先頭に立ち、その後ろに、横五列縦十人ぐらいの、

一般人による、大きくて長い行列ができた。

カツ丼小僧は、その様子を満足げに眺めると、持っていたノート型パソコンを、

隣にいた子供に渡し、自分は行列の前方からビデオ撮影をしたいんで、

そのパソコンから「スリラー」を流して、自分の後に付いてきて欲しいとささやいた。

 

子供は嬉しそうに、「うん。」とうなずくと、ニッコリ笑って、ウィンクした。

 

 

「それでは、皆さん、準備はいいかな? では、行きますよ。

 しゅっぱぁ~~~~~~つ、 しんこ~~~~~~~~~う ! !」

 

カツ丼小僧が、大きく号令をかけると、「スリラー」が、大音響で鳴り響き、

数十人の行列隊が、一斉に、ぎこちない足取りで行進し始めた。

 

二人の警官は、ミュージック・ビデオで、カツ丼小僧に教えられた通りに、

不気味な、いかつい顔をして、両手を大きく左右に振りかざし、がに股で歩いた。

ビデオでは、がに股ではなかったのだが、カツ丼小僧が、そのようにした方が面白い、と言うので、

そのような歩き方になったのだ。

 

「♪タンタラタンタンタン、タンタラタンタンタン、」

 

全員が一斉になって、「スリラー」のメロディを奏でながら行進した。

 

「うわっはっはっはっ、 こいつは面白い。 凄い傑作が撮れそうだぞ。」

 

カツ丼小僧は、列の前方から、ビデオカメラ片手に後ろ向きで歩きながら、大歓声を上げた。

 

「おいおい、警官さん達、 チ○ポも振り付けに合わせて、キチッと振ってくれよな。

 これはきっと、後世に残る程の文化遺産になるぜぇ。」

 

……… 、と、そこまで言った時、大邸宅の庭の門の前に着いてしまい、

行列隊は、そこで立ち往生してしまった。

 

 

「う~~~~ん、俺の庭の敷地はここまでか………。 意外と狭いもんだな。

 さて、どうするか………? ここから先は公の土地だぞ。」

 

カツ丼小僧は、暫く考えていたが、ポン、と手を叩くや否や、

 

「いやいや、ここで終わりにしてどうする? ようし、門をくぐって外に出よう。」

 

行列隊は再びカツ丼小僧の掛け声と、「スリラー」の小気味のよい音楽に乗って行進し始めた。

 

 

 

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