カツ丼小僧氏の優雅な生活。 15

「ちょっと待ってろよ、今、テンポのいい音楽を掛けっからよ。

 それに合わせて踊ってくんな。」

 

カツ丼小僧は、さっそくパソコンで音楽をダウンロードし始めた。

 

「よし、この曲に決めた ! この曲に合わせて踊ってくんな。」

 

カツ丼小僧が流した曲は、マイケル・ジャクソンの「スリラー」だった。

 

「え? 三遍回ってワンじゃなかったんですか?」

 

「いやいや、こっちの方が面白そうだ、 こういう事は臨機応変にいかなきゃ。」

 

「でも、マイケル・ジャクソンの「スリラー」なんて知りませんよ。 お前知ってるか?」

 

年長の警官が、若い警官に、そう尋ねたが、若い警官も知らない風だった。

カツ丼小僧は、呆れかえって言った。

 

「まったく………、マイケル・ジャクソンも知らないのか………。

 マイケル・ジャクソンの「スリラー」なら、普通、ミュージック・ビデオで見て、

 大概の人は知っている筈だが………。

 しょうがない、今、その映像を用意するから、繰り返し見て覚えてくれ。

 やるのはそれからだ。 本当に、世話の焼けるお巡りさん達だ。」

 

カツ丼小僧は、そう言って、一時間程かけて、二人の警官に「スリラー」の振り付けを憶えさせた。

 

「ようし、これで憶えたな、いいか、 絶対に忘れるなよ。

 これを最後に許してやるって言ってんだ、寛容な俺に、幾らかでも感謝しろよ。

 本当だったら、積年の恨み、いくらなぶり殺しても殺したりねえぐらいなんだ。」

 

そう言ったその瞬間、カツ丼小僧は、いいアイディアを思いついたようだ。

 

「そうだ、外に出て、この踊りをビデオに撮影しよう。

 日も暮れているようだし、「スリラー」撮影に、おあつらえ向きだ。

 さあさあ、皆さんも、全員、外に出てください。

 これから、世紀の一大ショーが始まりますよ。」

 

 

 

  

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