カツ丼小僧氏の優雅な生活。 12

カツ丼小僧と二人の警官は、リビングのテーブルのソファーに、向かい合って腰かけた。

テーブルの上には、先程の赤ワインが、まだ注がれたまま残っていた。

 

「ところで、俺の事を危険人物のように、警察に通報したのは、やはり、

 あの、ホテルの責任者である事には、間違いないな?」

 

「へ、へい、そうです。 それはもう、間違いありません。事実です。」

 

「お前らに、どうしても言いたい事がある。 ケツの穴、かっぽじって、よおく聞いてくれよ。」

 

カツ丼小僧は、急に険しい顔つきになり、テーブルの上に、ドン ! ! と片足を乗せた。

三本のワイングラスが、三本ともグラグラと揺れ、カチャンと音をたてて倒れた。

グラスが割れて、中のワインがテーブル中に広がった。

 

「ひっ ! !」

 

二人の警官は、一瞬びっくりした様子で顔を見合わせた。

 

「はっきり言っておくが、おまえらの捜査は、あまりにも杜撰で陳腐で一方的だよ。

 おまえらよ、遊びでふざけて仕事してんのかよ、俺が、ここ10年余り、どれ程苦しい思いを

 してきたかわかるか? 人を犯罪者か泥棒のように、あちこち触れ回った挙句、

 こちらの素性まで、平気で色々な所に言いふらし、やりたい放題やってくれたな。

 

 俺がエロイラストを描いてる「カツ丼小僧」だという事まで、おいそれとなく

 バラしているじゃないかよ。 警察官が一般市民の素性なんか、他人に漏らしていいのかよ?

 どうなんだ? キチ○イ、 少しは反省しろよ、キチ○イ、

 本当は、お前らの顔に出刃包丁を30本ぐらい、ブッ差してやりたいくらいの心境なんだ。 

 

 俺がまだ、30代の頃だけど、あるマンションの建築年数が知りたくて、

 たまたま近くを通りかかった警官に、

 「このマンション、いつ頃建設されたかわかりますか?」って聞いた事があるんだよ。

 

 そうしたら、その警官、「君、そんな、他人の素性なんか、人に簡単に教える訳にはいかないよ、

 なんなら、君、私に君の住所を教えてくれるのかね?」って言われた事があるんだぜ。

 同じ警官なのに、言ってる事と、やってる事と、随分と相違があるじゃねえかよ?

 え? どうなんだよ?」

 

「へ、へい、 ま、まぁ、確かに、それは、その、………警察官が、人の素性を、他人に漏らす、

 なんて事は、絶対にやってはならない事でございまして、カ、カツ丼様には、一体

 な、なんと、お詫びしてよろしいのやら………。」

 

「おいよ、いくらヘボな捜査ったって限度があるぜ。 これじゃ、ガキの遊び以下じゃねえかよ。

 まぁどうせお前らは、学生時代は、何の勉強もできなかった、落ちこぼれだからな、

 ………、バカはピストルと権力を握ると、すぐに舞い上がっちまうからな……、どうしようもねぇ。

 

 言っとくがな、我々市民は、おまえらの制服に頭を下げているんであって、

 おまえらの人格や人間性に頭を下げている訳じゃねえんだからな、

 そこんとこをはき違えるんじゃねえぞ ! !

 

 その証拠によ、お前らが私服でいる時、誰が頭下げてくれるんだよ、

 誰も下げちゃくれねえじゃねえかよ、 制服をつけりゃ、誰だって尊敬されるんだよ、

 お前らみたいなゲスどもでもな。」

 

二人の警察官は、もう頼むから勘弁してくれ、とでも言いたげに、

真っ青な顔で、この男の警察に対する罵詈雑言を聞いていた。

 

「カ、カツ丼小僧様、一体どうすりゃ許してくださいますんで………?

 私ら、あなたの言う通り、何でもしますから………。」

 

「よし、犬のお巡りさんごっこをしよう。」

 

「は………?」

 

 

 

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