カツ丼小僧と二人の警官は、リビングのテーブルのソファーに、向かい合って腰かけた。
テーブルの上には、先程の赤ワインが、まだ注がれたまま残っていた。
「ところで、俺の事を危険人物のように、警察に通報したのは、やはり、
あの、ホテルの責任者である事には、間違いないな?」
「へ、へい、そうです。 それはもう、間違いありません。事実です。」
「お前らに、どうしても言いたい事がある。 ケツの穴、かっぽじって、よおく聞いてくれよ。」
カツ丼小僧は、急に険しい顔つきになり、テーブルの上に、ドン ! ! と片足を乗せた。
三本のワイングラスが、三本ともグラグラと揺れ、カチャンと音をたてて倒れた。
グラスが割れて、中のワインがテーブル中に広がった。
「ひっ ! !」
二人の警官は、一瞬びっくりした様子で顔を見合わせた。
「はっきり言っておくが、おまえらの捜査は、あまりにも杜撰で陳腐で一方的だよ。
おまえらよ、遊びでふざけて仕事してんのかよ、俺が、ここ10年余り、どれ程苦しい思いを
してきたかわかるか? 人を犯罪者か泥棒のように、あちこち触れ回った挙句、
こちらの素性まで、平気で色々な所に言いふらし、やりたい放題やってくれたな。
俺がエロイラストを描いてる「カツ丼小僧」だという事まで、おいそれとなく
バラしているじゃないかよ。 警察官が一般市民の素性なんか、他人に漏らしていいのかよ?
どうなんだ? キチ○イ、 少しは反省しろよ、キチ○イ、
本当は、お前らの顔に出刃包丁を30本ぐらい、ブッ差してやりたいくらいの心境なんだ。
俺がまだ、30代の頃だけど、あるマンションの建築年数が知りたくて、
たまたま近くを通りかかった警官に、
「このマンション、いつ頃建設されたかわかりますか?」って聞いた事があるんだよ。
そうしたら、その警官、「君、そんな、他人の素性なんか、人に簡単に教える訳にはいかないよ、
なんなら、君、私に君の住所を教えてくれるのかね?」って言われた事があるんだぜ。
同じ警官なのに、言ってる事と、やってる事と、随分と相違があるじゃねえかよ?
え? どうなんだよ?」
「へ、へい、 ま、まぁ、確かに、それは、その、………警察官が、人の素性を、他人に漏らす、
なんて事は、絶対にやってはならない事でございまして、カ、カツ丼様には、一体
な、なんと、お詫びしてよろしいのやら………。」
「おいよ、いくらヘボな捜査ったって限度があるぜ。 これじゃ、ガキの遊び以下じゃねえかよ。
まぁどうせお前らは、学生時代は、何の勉強もできなかった、落ちこぼれだからな、
………、バカはピストルと権力を握ると、すぐに舞い上がっちまうからな……、どうしようもねぇ。
言っとくがな、我々市民は、おまえらの制服に頭を下げているんであって、
おまえらの人格や人間性に頭を下げている訳じゃねえんだからな、
そこんとこをはき違えるんじゃねえぞ ! !
その証拠によ、お前らが私服でいる時、誰が頭下げてくれるんだよ、
誰も下げちゃくれねえじゃねえかよ、 制服をつけりゃ、誰だって尊敬されるんだよ、
お前らみたいなゲスどもでもな。」
二人の警察官は、もう頼むから勘弁してくれ、とでも言いたげに、
真っ青な顔で、この男の警察に対する罵詈雑言を聞いていた。
「カ、カツ丼小僧様、一体どうすりゃ許してくださいますんで………?
私ら、あなたの言う通り、何でもしますから………。」
「よし、犬のお巡りさんごっこをしよう。」
「は………?」