カツ丼小僧氏の優雅な生活。 10

「どうだ? 凄い物、見ちゃったろう? うん? 警察に通報するかい?

 でないと、死体遺棄ほう助の罪で、君たちも罰せられるよ。」

 

「な、な、な、な、なにをバカな………、こ、こ、こ、こ、こ、こんな事が、許される筈は……、」

 

「許される筈は………、 なんだい?  許す、許さないっていうのは、神が決める事なんだよ。

 あんた方には、よくわからないだろうが、人間の意志なんてものは、どうにもならないんだよ。

 人間の運命っていうのは、もう、生まれる前から、全て決まっているのさ。

 もちろん、あんた方が、今日、ここに、この時間帯にやって来る事も、全てね。」

 

「あ、あんた、何を言ってるんだか、サッパリ………。」

 

「は、は、は、博士、と、とにかく、ここを出ましょう。 すぐ、警察に通報しなければ………。」

 

「ワ、ワシャ、ダメじゃ、も、もう、腰が抜けてしまって、とても動けん、

 お前一人だけでも、早く行って、警察や世の人達に………。」

 

「と、とんでもないです。 は、博士一人残して、ここを出て行く訳には参りません。」

 

その光景を見ながら、カツ丼小僧は大声を上げて笑い出した。

 

「うわーっはっはっはっ、 やっぱり、俺の思った通りだ、いつもこうなるんだ。

 まぁ、俺にしてみれば、どっちだって、いい事だがね。

 さぁ、早く、警察に通報しに行ったらいい………どうにもならんから………。

 

 さっき、ホテル責任者の事を、ブチ殺してやる、とかなんとか言ったけど、

 本当は、あのホテル責任者には、内心感謝しているんだ。

 うまく、警察に通報してくれた事をね。

 

 俺の大きな想念の中に、すっぽりと、巻き込まれたに過ぎないんだよ。

 警察もまた、俺の思惑通り動いてくれた。 奴らは、自らが法を犯して、犯罪者の集団となった。

 俺がマスコミや世間に、この事を暴露したおかげで、もう身動きはとれんだろう。

 

 だって、そうだろう。 取り締まる側が犯罪者の集団であるのに、

 そんな人間達が、人を裁いたり、取り締まったりできるのかい?

 そんな事、できる訳がないだろう。

 

 これで、警察は、俺の想念の中をも飛び出て、この現実世界で、完全に無力な物となった。

 少なくとも、俺に関しては、どうしようもなく無力だ。

 後は………。」

 

カツ丼小僧が、そこまで言いかけた時、玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「カツ丼小僧さん、警察の者です。 ちょっと、玄関の扉を開けてもらえませんか?」

 

 

 

 

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