「どうだ? 凄い物、見ちゃったろう? うん? 警察に通報するかい?
でないと、死体遺棄ほう助の罪で、君たちも罰せられるよ。」
「な、な、な、な、なにをバカな………、こ、こ、こ、こ、こ、こんな事が、許される筈は……、」
「許される筈は………、 なんだい? 許す、許さないっていうのは、神が決める事なんだよ。
あんた方には、よくわからないだろうが、人間の意志なんてものは、どうにもならないんだよ。
人間の運命っていうのは、もう、生まれる前から、全て決まっているのさ。
もちろん、あんた方が、今日、ここに、この時間帯にやって来る事も、全てね。」
「あ、あんた、何を言ってるんだか、サッパリ………。」
「は、は、は、博士、と、とにかく、ここを出ましょう。 すぐ、警察に通報しなければ………。」
「ワ、ワシャ、ダメじゃ、も、もう、腰が抜けてしまって、とても動けん、
お前一人だけでも、早く行って、警察や世の人達に………。」
「と、とんでもないです。 は、博士一人残して、ここを出て行く訳には参りません。」
その光景を見ながら、カツ丼小僧は大声を上げて笑い出した。
「うわーっはっはっはっ、 やっぱり、俺の思った通りだ、いつもこうなるんだ。
まぁ、俺にしてみれば、どっちだって、いい事だがね。
さぁ、早く、警察に通報しに行ったらいい………どうにもならんから………。
さっき、ホテル責任者の事を、ブチ殺してやる、とかなんとか言ったけど、
本当は、あのホテル責任者には、内心感謝しているんだ。
うまく、警察に通報してくれた事をね。
俺の大きな想念の中に、すっぽりと、巻き込まれたに過ぎないんだよ。
警察もまた、俺の思惑通り動いてくれた。 奴らは、自らが法を犯して、犯罪者の集団となった。
俺がマスコミや世間に、この事を暴露したおかげで、もう身動きはとれんだろう。
だって、そうだろう。 取り締まる側が犯罪者の集団であるのに、
そんな人間達が、人を裁いたり、取り締まったりできるのかい?
そんな事、できる訳がないだろう。
これで、警察は、俺の想念の中をも飛び出て、この現実世界で、完全に無力な物となった。
少なくとも、俺に関しては、どうしようもなく無力だ。
後は………。」
カツ丼小僧が、そこまで言いかけた時、玄関の呼び鈴が鳴った。
「カツ丼小僧さん、警察の者です。 ちょっと、玄関の扉を開けてもらえませんか?」