「カツ丼小僧さんが、異常なまでに、警察組織を憎んでいる事は、よくわかりました。
でも、なんで、ここまで酷い状態になってしまったんでしょうね。」
「うん、俺にも、ようわからん………、とにかく、最初、自分が警察に付け狙われていると
知った時は、確かにちょっとビビったが、それ程は気に留めていた訳ではなかったんだ。
でも、月日が経つにつれ、奴らの、陰湿さや残忍な振る舞いに、内心、身の毛のよだつような、
恐怖を感じるようになったんだ。」
「具体的にいうと、どんな事です?」
「車で、轢き殺されそうになった事があるんだ。」
「えっ?」
「信じられないような野蛮さだ、学校時代、何の勉強もできなかった、落ちこぼれのクズが、
権力を持つと、何をやってくるか、わからない。 猿と同じだ。
徐行運転ではなく、凄いスピードで、後ろから襲って来て、俺の前で、急カーブして曲がったんだ。
もちろん、最初から当てるつもりはないんだ、ただの脅しさ。」
「でも、何故、それが、警察の仕業だと断言できるんです? 証拠はあるんですか?」
「おい、その質問はやめろ !! そう言われると、いつまでたってもキリがない。
あのバカホテルの責任者と同じだ !! 証拠があるのか、証拠があるのかって、嘘ばかりついて
しらばっくれやがって ! ! あのホテルの責任者だけは、絶対に許しゃしねえ ! ! ブチ殺してやる ! !」
彼はそう叫ぶと、また、ソファーから立ち上がり、傍に置いてあった、出刃包丁を掴みとると、
数回、宙をなで切るように大きく振り回し、そして今度は、へその辺りから、また数回、
前方に向って、思いっきり空を突き刺した。
「カ、カツ丼小僧さん、やめてください ! ! 落ち着いて……、落ち着いてください!!
………と、とりあえず、座って、座って………。」
二人がなんとか、とりなだめると、彼は、ソファーに腰を降ろし、真っ青な顔をして、うつろな目つきで、
ゴチョゴチョと、何か呟いていたが、暫くして、正気に戻り、
「殺人者っていうのは、こんな風になって、出来上がっていくんだろうなぁ………。」
と、フッと、一息、ため息をつくと、博士らの方を見て、
「そうだ、ちょっと、あんた方に見せたい物がある、 こっちに来てくれ。」
と言って、一人、キッチンの方へ向かって歩いて行った。
「博士、どうします? 僕、何か、段々怖くなってきましたよ………。 帰りましょうか?」
「バカ者、ここで帰ってどうする? おまえには記者魂という物がないのか?
これから、何か大きな収穫が待っているような気がするワイ。ほっほっほっ。」
二人は、大いなる好奇心を抱きながら、カツ丼氏の後について行った。