カツ丼小僧氏の優雅な生活。 7

「カツ丼小僧さんが、異常なまでに、警察組織を憎んでいる事は、よくわかりました。

 でも、なんで、ここまで酷い状態になってしまったんでしょうね。」

 

「うん、俺にも、ようわからん………、とにかく、最初、自分が警察に付け狙われていると

 知った時は、確かにちょっとビビったが、それ程は気に留めていた訳ではなかったんだ。

 でも、月日が経つにつれ、奴らの、陰湿さや残忍な振る舞いに、内心、身の毛のよだつような、

 恐怖を感じるようになったんだ。」

 

「具体的にいうと、どんな事です?」

 

「車で、轢き殺されそうになった事があるんだ。」

 

「えっ?」

 

「信じられないような野蛮さだ、学校時代、何の勉強もできなかった、落ちこぼれのクズが、

 権力を持つと、何をやってくるか、わからない。 猿と同じだ。

 徐行運転ではなく、凄いスピードで、後ろから襲って来て、俺の前で、急カーブして曲がったんだ。

 もちろん、最初から当てるつもりはないんだ、ただの脅しさ。」

 

「でも、何故、それが、警察の仕業だと断言できるんです? 証拠はあるんですか?」

 

「おい、その質問はやめろ !! そう言われると、いつまでたってもキリがない。

 あのバカホテルの責任者と同じだ !! 証拠があるのか、証拠があるのかって、嘘ばかりついて

 しらばっくれやがって ! ! あのホテルの責任者だけは、絶対に許しゃしねえ ! ! ブチ殺してやる ! !」

 

彼はそう叫ぶと、また、ソファーから立ち上がり、傍に置いてあった、出刃包丁を掴みとると、

数回、宙をなで切るように大きく振り回し、そして今度は、へその辺りから、また数回、

前方に向って、思いっきり空を突き刺した。

 

「カ、カツ丼小僧さん、やめてください ! ! 落ち着いて……、落ち着いてください!!

 ………と、とりあえず、座って、座って………。」

 

二人がなんとか、とりなだめると、彼は、ソファーに腰を降ろし、真っ青な顔をして、うつろな目つきで、

ゴチョゴチョと、何か呟いていたが、暫くして、正気に戻り、

 

「殺人者っていうのは、こんな風になって、出来上がっていくんだろうなぁ………。」

 

と、フッと、一息、ため息をつくと、博士らの方を見て、

 

「そうだ、ちょっと、あんた方に見せたい物がある、 こっちに来てくれ。」

 

と言って、一人、キッチンの方へ向かって歩いて行った。

 

「博士、どうします? 僕、何か、段々怖くなってきましたよ………。 帰りましょうか?」

 

「バカ者、ここで帰ってどうする? おまえには記者魂という物がないのか?

 これから、何か大きな収穫が待っているような気がするワイ。ほっほっほっ。」

 

二人は、大いなる好奇心を抱きながら、カツ丼氏の後について行った。

 

 

 

 

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