「博士、今日初めて、カツ丼小僧さんのご自宅にお伺い出来るなんて、
なんか、ちょっと緊張するし、ゾクゾクしませんか?」
「そうかね、ワシはなにも緊張せんが………。 ワシはもう、恐れる物など何もない年齢じゃ。
小僧一匹に緊張などして、どうするんじゃ?
松下奈緒ちゃんでも現れれば、少しはドッキリもするじゃろうが………。」
お尻倶楽部編集者から渡された地図を頼りに、都心から少し外れた、のどかな郊外を進んで行くと、
カツ丼小僧の豪奢な屋敷があった。 洋式建築の壮麗な豪邸が二人の目の前にあった………。
屋根の上には、仰々しく、「カツ丼小僧デラックスハウス」という大きな看板が飾ってある。
「博士、これはビックリしました………、予想外です、 こんな立派な家に住んでいるとは………。」
「うん、たまげたな、………でも、たまげてはいかん、………
中から、AKB48でも出て来るという訳じゃなし、キチッと対応しなければ………、
今日は遊びで来た訳ではないんじゃ………、カツ丼氏への取材という名目で来た訳じゃから………。」
「ふふふ………、博士の話の中には、いつもアイドルや女性タレントが出て来るので、
なんだか、嬉しくなってきますよ………。」
今にも、噛みつかれそうな荘厳なライオンの顔をかたどった、呼び鈴のボタンを押すと、
暫くして、中から葉巻をくゆらせた、恰幅のいいガウン姿の男が現れた………。
「あ、いや、遠い所を、よくおいでくださいましたな………。
お待ちしておりましたよ、 さあ、どうぞ、どうぞ、中へ。」
男は、口から煙を吐き出すと、さも愉快そうな顔をして大声で笑った………。
その、屈託のない笑顔は、まるで子供そのもののようにも見えた。
「あなたがカツ丼小僧さんですね、今日は本当にお会いできて、光栄です。」
「まあ、まあ、堅苦しい挨拶は抜きにして、とにかく、御上がんなさい。」
中に通された二人はあっけにとられた。
なぜなら、部屋の中いっぱいが、金銀珊瑚綾錦、世界中の、ありとあらゆる豪奢な装飾品や宝石、
一流の絵画や家具などで、びっしりと埋め尽くされていたからである。
「こ、これ、皆、カツ丼小僧さんの物なんですか………?
随分と大富豪のようで、おられるようですね? 資産は如何ほどお持ちで………?」
「バ、バカ、………失礼な事を聞くんでない………、
カ、カツ丼小僧さんが、一体、どのようにして、このような、お金持ちに
なられたのか………、その、いきさつを………。」
博士がそこまで話しかけた、その瞬間だった、………
いきなり、カツ丼氏は、「うおっ ! ! 」と、大声を張り上げると思いきや、
ソファーから立ち上がると、ドドドドドッ と、隣の部屋に駆け込み、再度絶叫したかと思うと、
暫くもしない内に、また、すぐに戻って来て、
「お、おい、き、君たち、……やった、やったぞ ! ! ……中村紀洋が、今、左中間方向に
二塁打を放った、………これで、2000本安打達成だ ! !
中村紀洋、偉業達成、本当に、おめでとう ! !
それに今年のベイスターズは、やけに調子がいい。
このまま行けば、ひょっとすると、ひょっとするぞ~~~~~~っ!!]
カツ丼小僧氏は、大の横浜DeNAファンであったのだ。