「いや~~、今日は本当に素晴らしい日だ、………、
中村紀洋は、ナゴヤドームで、2000本安打を達成するし、
元、読売巨人軍の長嶋茂雄さんと松井秀喜は、東京ドームで国民栄誉賞を授与するし………、
端午の節句、子供の日にふさわしい、大祝日だ………。
あとは、中日ドラゴンズの谷繁の2000本安打だな。」
「でも、谷繁さんは、他球団の選手ですよ………、いいんですか……?」
「おい、あんまり俺を見損なわないでくれ、………そんなにケツの穴の小さな男じゃないよ、
こういう、個人の記録ともなると、話は別だ………
ましてや、谷繁元信は元横浜ベイスターズの正捕手だったんだぜ。
まぁ、当時の森監督と険悪な状態になって、結局ドラゴンズに移籍しちゃったんだけど………。」
「今日、ここを、お伺いしたのは、野球の話ではなく、カツ丼小僧さんのこれまでの半生と、
今現在の性癖、………いや、生活について、お尋ねしようと………。」
「俺の半生だって? 何もしてないよ、ただ、寝っ転がってゴロゴロしていただけだよ。
若い頃、数か月程、漫画家のアシスタントをしていた事があるけど、
役立たずで、すぐに辞めさせられちゃったよ。 俺は、こう見えて体力も能力も、まったくないんだ。」
「というと、生まれて、この方、一度も正規の職に就いて働いた事がないんですか?」
「ないね………。」
「じゃあ、どうして、こんな豪勢な暮らしをしているんですか? 理解に苦しみますね……?
親が大資産家だったとか、ドリームジャンボ宝くじに当せんしたとか?」
「親には、若い頃から世話になってきた………、迷惑のかけ通しだった。
でも、俺の親は別に資産家とか、大金持ちだった、という訳ではない………。
俺一人分くらい、なんとか養うくらいの金の余裕があったというだけのものだ………。」
彼は葉巻を、さもうまそうに、くゆらせながら話を続けた………。
「俺にとっては、想念の力が全てなんだ……、」
「ソウネン?」
「うん、つまり、頭の中で考えた想いだ………、俺は若い内から、俗世間とは、
殆ど関わりを持たずに、常に没交渉的な態度を取っていたから、
この現実世界のルールやしきたりに、囚われる事がなかったんだ。」
「ルールやしきたり? つまり、この世の常識という事ですかな?」
「まぁ、そういう事です。 つまり、普通の人間だったら、
働かなければ、金は自分の手元に舞い込んで来ないと思うだろう………、
これが「常識」だ。 でも、俺は違うんだ………。
実際には働かなくとも、想念の中で、自分を大金持ちにしてしまったんだ。
長い間、心の中で、思い続けて来た事は、その分だけは、いずれ現実の物となって
この世に現れてくるというという考えだ。」
「何か、面白そうな話ですね、それでは、この話の続きは、また次回………。」