昔、よく、「ペーソスのある笑い」といって、
下町人情的な、人の涙を誘う笑いというのがありました。
まぁ、僕の好きな、渥美清さん演じる、車寅次郎のような、
お人好しで憎めない男の浪花節的、人情泣き笑い奮戦記、といった所でしょうか。(笑)
こういう場合、何と言いますか、主人公の性格という物が、何より重要でして、
大多数の人に好かれるというのが、絶対的な条件だと思います。
もっと言えば、清貧、朴訥、バカ正直、なども加えられます。(笑)
前回述べた、人の欠点やぎこちなさを笑う、という物に、幾らかの類似性も見られますが、
やはり、それとこれとには、一線を画すべき物があると思います。
このような場合は、作り手の笑いの意図が、決して悪意のあるものではなく、
是、即ち、愛に満ちた物であり、慈悲の目で、その対象(となる人物)を見ているからです。
そういった、作り手のキャラクターに対する「愛」という物は、当然、受け手の方にも、
伝わりますので、その主人公が、どんなにダメで、ドジな人間でも、決して、バカにしたり、
蔑んだりしたような目で見る事もありません。 つまり「黒い笑い」とはならない訳です。
昔、映画館で寅さん映画を観終わって、客席から立ち上がって帰る時の、年配のご婦人方の
表情を、つぶさに観察していたのですが、やはり皆さん、泣き笑いというか、
うっすら目に涙を滲ませながら、笑っていたような顔をしていましたね。
映画館の中で大いに笑って笑いつくして、出る時はその感慨で、うっすら涙という所ですか? (笑)
僕の好きな、ペーソスギャグ漫画は、やはりなんといっても、子供の頃に読んだ、
つのだじろうさんの「泣くな ! 十円」と「その他くん」です。
今、ネットで検索したんですけどね、本当に懐かしいですね、
秋田書店(少年チャンピオン)発行の単行本、「泣くな ! 十円」と「その他くん」の 表紙絵。
(「その他くん」は、講談社・少年マガジン)
ほのぼのとした懐かしさで、もうそれだけで、涙が出てきます。
前にも書きましたが、つのださんは、オカルト漫画の人気に火がついて、そちらが忙しくなりすぎて、
「泣くな ! 十円」を途中で断念したそうです。だから、単行本では2巻までしかありません。
僕としては断然、「泣くな ! 十円」の方を続けてもらいたかったのですが………。
ちょっと、話が脇道に反れましたが、僕がなにも、このような事を書いたからといって、
こうした、下町人情的な笑いが良いとか、笑いのレベルが高いとか言っている訳ではありません。
ただ、僕は今、ここで、この世に存在する、多くの笑いの種類(ジャンル)を
例を挙げるなどして、説明しているだけです。
僕自身としては、ロアルド・ダールや、藤子不二雄さんのような、ブラック・ユーモア的な笑いが
好きですし、たぶん、自身の中には、その要素が一番多く存在していると思います。
多様な人格が、「カツ丼小僧」という一人の人間の中に詰め込まれている僕にとっては、
たとえ、ダジャレや、せせら笑い、嘲笑だって、一つの大きなテーマです。
どれが良いとか、悪いとかではなく、世の中には、実は、もっと色々な笑いという物があるのだから、
安易に、ダジャレや人の悪口で笑いを取る事はせずに、
もっと他の笑いを追求してみようじゃないか、という事なんです。