長嶋さんの握手会の事と王さんの新記録ホームランの事と、
プロ野球選手の話を2つしましたが、実は、もう一つ、とっておきの話が………。
これは、僕がまだ、苛めに合う前の、恐らく、小学4~5年生ぐらいの時の事だと思います。
家の近くのスポーツセンター(野球場)の回りで、何人かの友達と遊んでいたところ、
たくさんのプロ野球選手が、球場の中からドヤドヤと出てきて、友達がみんな、サーーツと
一斉にそっちの方へ寄って行ったのです。
選手の一人一人に子供たちが群がって、サインペンと色紙片手に、選手にサインをねだっていました。
(子供の頃のことで、記憶が定かではありません。何故、他の子も僕もサインペンと色紙を
持っていたのか憶えていません。その場で無料で配っていたのかもしれませんし、
もしかしたら、最初から、サイン目的で、そこに行ったのかもしれません。)
僕は、最初ちょっと、ボケッとしていたので、みんながサインをもらっているのに、
なぜか一人、出遅れて、サインをもらうことが出来なかったので、凄く焦りました。
その時、ある選手が、自分の車の前で、大勢の子供たちに(自分の体が車と子供たちの集団に挟まれるような格好で)サインをねだられていました。
子供たちの、その選手に対する罵声が聞こえてきます。
「いいじゃねえかよ。サインぐらいしてくれよ!!]
「ケチケチ、ドケチ!!」
その選手は何か、忙しそうな感じで、サインをしたくないような感じで手を横に振っていました。
そして、僕は、その子供たちの集団の少し後ろの方にいたのですが、
何も言わないで、無言のまま、色紙とサインペンを持った右手を、グーーーッと、前の方に差し出しました。(実は、相当無理をして、苦しかったのですが……)
そうしたら、その選手は、スッと僕の差し出した色紙を取って、サラサラッとサインをしたかとおもうと、
自分の車に乗って、サーーーッと、どこかに行ってしまいました。
なんと、その選手は、僕一人にだけサインをしてくれたのです。
色紙を見ると、「弘田澄男」と、記してありました。
当時、人気のあったロッテの中堅外野手(センター)、弘田だったのです。
ただ、僕は、その時はパ・リーグの選手はあまり知らなかったので、弘田さんの事はまったく知りませんでしたが………。(笑)(当時、パリーグは、まったく人気がなかった。)
でも、周りの子供たちは、みんな知っていて、僕の所に寄ってきて、
「すげぇなあ、弘田のサインだってよ~~。いいなあ~~。いいなあ~~。」
と、羨ましがるのです。
他の子のもらったサインの選手は、あまり有名ではなかったようです。
何故、弘田選手は僕にだけサインをしてくれたのでしょうか?
もちろん、人の心の中なんて誰にもわかりようがありませんし、今となってはどうでもいいことです。
ただ、これは僕の推測ですが、弘田選手は、礼儀しらずな子供たちが内心、腹立たしかったんじゃないでしょうか?
いくら、相手が子供でも、疲れていて、しかも忙しい時に、「サインしろ!! サインしろ!!」
なんて、つっけんどんにせがまれたら、誰だっていい気持ちはしませんよ。
そんな中で、僕だけは何も言わずに、黙って、色紙を差し出したわけですから、
そんな僕に、好感を抱いてくれたんじゃないでしょうか?
この時ばかりは、僕の子供らしくない性格が、功を奏したのかもしれませんね。(笑)